今回の記事のテーマはCRM/SFAシステムの選び方です。
投稿者の経歴としては今から20年以上前にNotesのDBで作られたSFAモドキのシステムからスタートし今に至るまで外資系パッケージ、クラウドサービス、OSSなどのCRM・SFAシステムの企画・営業・コンサルティングに携わってきました。
CRM・SFAシステムの現状は、とても[選択肢]が多く、ユーザーもシステムを選定するのが大変な状況だと感じています。そこで、20年以上の経験を元にあくまでもフラットな考えに基づいたCRM・SFAシステムの[選び方]をご説明させていただきたいと思います。選定でお悩みのユーザー様の一助になれれば幸いです。
前書き
早速ですがCRMツールの選定は、
Saleforceを選択しておけば間違いはありません。
カバーしている業務範囲、各機能の深さ、柔軟性、他システムとの連携、蓄積された活用ノウハウ、どれをとってもやはりNo.1だと思います。弊社は創業当初にSalesforceの代理店を行っていましたので自信を持って言えます。
但し、
システムというのは人が使いこなして初めて成果という果実を摘み取ることができます。例えば、Excelを例に説明しますと、通常の四則計算だけしか使えない人と関数を使いこなす人、更にはマクロを使いこなす人とでは生産性は大きく変わってきます。CRMシステムもExcelと同様にどれだけ使いこなすかで得られる成果は大きく変わってきます。
そういう意味ではCRMツールの選定は以下のようにも言えるかと思います。
実はツールはなんでも良く、ちゃんとツールを使いこなせるかが重要
[ツールはなんでも良く]では今回の記事は意味がなくなりますので、より多くの効果を出せるツールを選ぶためにはどういったことにポイントを置いて選定すればいいのかをご説明させていただこうと思います。
選定ポイント
導入目的は何?(機能要件を決めるため)
CRMツールを分類すると大きくは[統合型]と[単機能型]に分類できます。欧米のCRMシステムはマーケティングから営業(SFA)、カスタマーサポート他までの業務範囲をカバーした統合型[オールインワン型]のシステムが主です。国産システムの場合は、統合型も存在していますが圧倒的に単機能型が多いと思います。特定業務に特化し各ツールが特色を出すことで痒いところに手が届いたシステムが数多く存在しています。国内においては非常に優秀な単機能特化型ツールも多いことから導入目的に合わせてツールを選択することでコストをセーブしたり、特化した機能も使うことができるようになります。
機能要件を決めるためには導入目的を明確化することが重要です。
CRMシステムの一般的な導入目的を業務視点で整理すると、
- 営業業務の強化、効率化(SFAと呼ばれる分野)
- カスタマーサポート業務の強化、効率化
- 顧客情報の集約と全社での活用などなど
最終的には、
顧客満足度の向上による優良顧客化と自社の売上・利益の拡大になるかと思います。
CRMという概念は本来、会社の利益の多くは取引上位の優良顧客から生じているという事実や新規開拓のコストを考えると既存顧客を優良顧客化する方がコストが安いなどの考えを基に既存顧客の顧客満足度を上げ優良顧客化することを主眼にした経営戦略の一つでした。
実際に顧客満足度を向上させるためのシステムとはどんなものでしょうか?
顧客と接点が発生する全部門(=全社)で共通した顧客情報に基づいた業務が行えるシステムだと言えます。共通した顧客情報に基づいて業務が行えるため全ての部門で首尾一貫した対応が行えるようになります(今風に言うと、優れたカスタマー・エクスペリエンスとでも言うのでしょうか)。例えば、「その件、営業に言ってあったのに、、、」「その件、経理から連絡あったよ、、、」などというユーザーの反応が無くすことが可能になります。欧米のCRMシステムはCRM本来の要件(顧客満足度向上)を目的としているため統合型が多くなっているわけです。
CRMシステムに求められるニーズを上記のように定義すると、CRMシステムを検討するユーザーは、営業支援(SFA)機能とカスタマーサポート機能などを持っている全社で利用できる統合型のツールを選定することがベストな選択肢だと私は考えています。決して単機能型ツールが駄目だということではありません。目的が明確になっていてそれが単機能型ツールで達成できるのであれば全く問題はありません。むしろコストがセーブできたりするのでメリットが大きいかと思います。
いずれにしろ導入目的さえ明確に定義できていたらツールの選択肢を狭めることができます。まずは将来も見据えながら導入目的を定義することから始めることが重要です。
コスト
CRMシステムは、
- すぐに費用対効果が現れるシステムではないこと
- 場合によっては直接的には売上に寄与しないこと
- 費用対効果を算出し辛いシステムであること
などの理由でコストをどの程度掛けていいのか判断し辛いシステムです。
ここはシンプルに、設定した[目的]を実現できる機能があれば、より低コストなものを選択するのが企業とってはベストな判断だと考えます。
但し、予算が潤沢にある場合はこの限りではありません。多少オーバースペックでも高機能なツールを選択すべきです。ツールの使いこなしが進めばその機能が必ず役立ちます。最近のツールの多くは機能に差がある複数のライセンスパターンを採用しています。最初はミニマムプランで導入し段階的にアップグレードするという方法もあります。
コストに関してまとめると、
CRMシステムの導入目的を実現するための必要な機能要件と掛けることができる予算のバランスで選定しましょうということになるかと思います。
サポート
CRMシステムのリプレース提案、リプレース案件を経験してきた中で感じたことがあります。
ツールの使いづらさや自社に合わなかったという理由でリプレースを検討されるユーザーがいらっしゃいます。しかし本当の問題はそのツールを[使いこなさなかった]というのが理由だと感じています。[使いこなせなかった]ではなく[使いこなさなかった]です。
導入はしたものの[使いこなし]のサポート体制が不十分だったことが原因です(CRMシステムを[使いこなす]ためにはユーザーの運用管理者の負荷はかなり高いものになります)。
この件に関してはCRMシステムのベンダー側にも問題がありました。ツールの利用に関する基本的なサポートは無償ですが[使いこなし]をしっかりとサポートできるようなサービスはそもそも存在しないか、あっても有償だったりすることが多ったのです。その結果、導入後の[使いこなし]はユーザーの自己責任になり、数カ月後には使えない、使わないシステムとなっていました。最近は状況がかわりサブスクリプション形式のCRMシステムが多いため継続利用をしていただくためにサポートサービスが充実してきている状況だと思います。
いずれにしろ、有償・無償を問わずユーザーの自発的な[使いこなし]のためのサポートが充実しているのかは選定の重要なポイントの一つです。
まとめ
我々が考えるCRMツールの選定に必要なポイントは、
1.導入目的を実現できる機能を持っていること
2.予算と機能のバランスがとれたコストであること
3.使いこなしのサポートがあること
以上3点になります。
CRMベンダーの担当者が今までの経験を元にフラットな目線で整理させていただきました。皆様の参考になれれば幸いです。